大型トラックの安全性を高めるには?事故を減らす先進技術を紹介

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大型トラックの安全性を高めることは、物流業界全体の課題であり、社会的な責任でもあります。特に、トラックによる事故は被害が大きく、企業の信頼やドライバーの命にも関わる問題といえるでしょう。

この記事では、各国の事故の現状のほか、大型トラックの特性と安全運転のポイントについて詳しく紹介します。さらに、事故を未然に防ぐための先進技術や対策についても解説します。

大型トラック事故の現状

大型トラックによる交通事故は、世界的に深刻な社会問題となっています。

NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)によると、アメリカでは2022年に大型トラック関連の死亡事故が5,936件発生し、前年から約2%増加しました。なお、この数字は過去10年間で、約49%も増加しています。

インドでは長時間運転が問題となっており、11520時間もの運転をしいられているケースも少なくありません。ドライバーの過労や過積載、不適切な整備、そして道路インフラの不備がトラックによる深刻な交通事故を多発させています。また、インドネシアでも、安全基準の未整備や運転者の訓練不足による事故が課題です。

アフリカ諸国でも大型トラックによる交通事故が深刻な問題となっており、居眠り運転や夜間視認性の低さ、整備不良などがその原因です。例えば、ケニア政府は、この問題に対して20242028年の国家道路安全行動計画を策定し、ドライバーの労働時間が最大8時間になるよう、対策を始めています。

各国の事故の背景には、共通して運転者教育や運行管理の不備が見られます。そのため、テクノロジーの導入だけでなく、制度改革やインフラ投資、現場レベルでの継続的な啓発活動も、併せて進めることが重要といえるでしょう。

安全運転をするために知っておきたい大型トラックの特性

大型トラックは、構造や性能が普通車と大きく異なるため、運転する際には特性の理解が欠かせません。特に注意が必要なのは、死角の多さや制動距離の長さといった、一般車にはない危険性です。ここでは、そうした大型トラックの特性を踏まえた、安全運転のための注意点を解説します。

 

車両の大きさと重量

大型トラックは、全長・全幅・全高のいずれも一般車より大きく、総重量が10tを超えることも少なくありません。そのため、カーブでは遠心力が強く働き、速度を抑えなければ転倒や車線逸脱のリスクが高まります。

こうした特性を理解した上で、エンジンブレーキを活用したり、早めに減速したりするなど、慎重な操作を心掛けることが安全運転の基本です。

 

死角の多さ

大型トラックは運転席の位置が高く、車両も長いため、左右や後方に大きな死角が生じやすい構造です。特に、左側後方や前方のすぐ下は視認しにくく、歩行者や二輪車と接触するリスクが高くなります。

こうした死角は、ミラーやカメラなどの補助装置を活用しない限り、ドライバーの目視だけではカバーできません。交差点での右左折や車線変更時には、死角を意識した十分な確認が不可欠といえるでしょう。

 

制動距離の長さ

大型トラックは車両重量が大きいため、ブレーキを踏んでから完全に停止するまでの制動距離が長くなります。積載量が多いほどその距離は延び、路面が濡れている場合や下り坂では、さらに危険性が高まります。この特性を踏まえ、ドライバーは常に余裕を持った車間距離を保ち、早めの減速やエンジンブレーキの併用を徹底することが重要です。

特に都市部や高速道路では、前方の状況をいち早く察知し、無理のない予測運転を行うことが、安全運転に直結します。

 

車両の重心の位置

大型トラックは車両が大きく重量もあるため、走行中のバランスを保つには繊細な運転操作が求められます。特にカーブや坂道、強風時には車両が不安定になりやすく、わずかな操作ミスでも横滑りや転倒のリスクが高まります。車高の高さや荷台の構造も車両バランスに影響を与える要因であり、重心の位置や荷物の積み方によっては、走行安定性を大きく損なう可能性があります。

さらに、過積載や荷物の偏りがあると、車両全体の重心がずれてバランスが崩れやすくなります。これにより制動距離が延びるだけでなく、カーブでのふらつきや急な操作時の横転リスクが増大します。安全運転を実現するには、車両の特性を理解し、荷重や重心の管理を徹底することが不可欠です。

 

大型トラックの安全性を高めるための先進技術

大型トラックの安全性を高めるには、先進技術の活用が欠かせません。では、実際にどのような技術が事故防止に役立っているのでしょうか。ここからは、注目すべき先進技術を紹介します。

車線逸脱警報装置

「車線逸脱警報装置(LDWS)」は、トラックが意図せず車線をはみ出しそうになった際に、音や振動でドライバーに注意を促すシステムです。前方カメラが車線を常時監視し、方向指示器を出さずに車線を逸脱した場合に作動します。

特に、長時間の運転による疲労や居眠り、脇見運転など、人為的なミスを補う技術として有効です。高速道路や長距離輸送において事故防止の大きな助けとなるため、安全運転支援技術として積極的に導入が進んでいます。

先進緊急ブレーキシステム

「先進緊急ブレーキシステム(AEBS)」は、前方に障害物や車両がある場合、衝突のリスクが高まるとシステムが警告を発し、ドライバーが反応しない場合には自動的にブレーキを作動させる技術です。

このシステムは、都市部や渋滞時の低速走行時や高速道路での追突防止に特に効果的で、前方不注意による事故を防ぐために重要な役割を果たします。大型トラックは制動距離が長いため、AEBSが作動することで事故の重大化を防ぎ、ドライバーの安全を支援します。

死角検知システム

「死角検知システム(BSD)」は、大型トラックのミラーや目視では確認しづらい車両側面や後方の死角に他車や障害物が存在する場合、ドライバーに警告を発する安全支援技術です。特に、左折時や車線変更時といった見落としやすい場面での、事故の防止に効果を発揮します。

センサーやカメラが周囲を常時モニタリングすることで、ドライバーの視界を補完し、より安全な運転をサポートします。

ドライバーモニタリングシステム

「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」は、カメラやセンサーを用いてドライバーの顔の向きや目の動き、まばたきの回数などをリアルタイムで監視し、異常があれば警告を出すシステムです。近年では、顔色の変化や脈拍などを検知する高機能タイプも登場し、体調変化にも対応できるようになっています。

長時間の運転による疲労や居眠り運転による事故を防ぐ上で、DMSはドライバーの状態を客観的に把握し、安全運行を支える有効な技術です。

長時間の運転を支えるUDトラックスの先進技術

UDトラックスは、ドライバーの安全性と快適性を両立するために、独自の電子制御式ステアリングシステム「UDアクティブステアリング」を開発しました。この先進技術は、ドライバーの疲労を軽減しながら、長時間の運転でも安定した走行を実現することを目的としています。

具体的には、低速時には軽い操作感が特徴で、高速走行時には直進安定性を高め、ハンドルのふらつきを抑える仕組みとなっています。さらに、横風や路面の凹凸など、外的な力による車両の揺れも電子制御によって自動で補正されるため、長距離輸送におけるドライバーの負担を大幅に軽減できるようになりました。

こうした機能により、疲労による判断力の低下や運転ミスのリスクを抑え、安全運転を支援する重要な役割を果たしています。