トラックの荷崩れを防止するには?原因、事故事例、対策方法を解説

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トラック運送において荷崩れは重大なリスクとなりますが、適切な対策により事故の防止が可能です。荷崩れは、過積載や不適切な積み方のほか、運転中の振動や急操作が主な原因となります。 

本記事では、荷崩れの原因から実際の事故事例、効果的な予防策、安全運転技術まで、運送事業者が知っておくべき知識を解説します。 

 

トラックの荷崩れが起こる主な原因 

トラックの荷崩れの根本原因を理解することは、予防の第一歩です。まずは、過積載や積載方法の不備、運転中の振動や急操作といった、荷崩れにつながる主な原因を紹介します。 

 

過積載による構造的不安定 

過積載は、荷崩れの大きな要因です。法定積載量を超えると車両の重心が高くなり、カーブや傾斜での転倒リスクが急激に増大します。 

また、重量超過はブレーキ距離を延ばし、ハンドル操作を重くし、タイヤへの過負荷を招きます。結果として、運転性能が低下して制御困難な状況となり、荷台からのはみ出しや荷崩れの危険性が高まるのです。 

 

積み方の不備による不安定化  

荷物の不適切な積み方は、荷崩れによる事故リスクを増加させます。重い荷物を上部に積んだ場合、軽微な振動でも荷崩れが発生します。本来、「重いものは下、軽いものは上」が基本です。 

また、荷物間に隙間があると、走行中の振動や急ブレーキで荷物が移動し、連鎖的な崩壊を引き起こしてしまうでしょう。さらに、ロープやベルトの締め付け不足、不適切な結び方、劣化した固定具の使用は固定不良を招き、走行中に荷崩れが発生する原因となります。 

 

運転中の振動による累積的影響 

悪路走行や段差の通過は、荷台に縦横の振動を伝えます。工事区間での徐行や停止の繰り返しも、固定具を徐々に緩める要因です。 

また、ディーゼルエンジン特有の振動や、老朽化した車体による振動増大は、長時間にわたって荷物の安定性を損ない、荷崩れを誘発するリスクがあります。 

 

急激な運転操作による慣性力 

急発進や急ブレーキなどの急操作は、荷物に大きな慣性力を作用させます。急ハンドルや急カーブでは遠心力や横方向の慣性力が働き、適切に固定された荷物でも移動や転倒が発生するケースは少なくありません。 

特に、貨物の重量が加わった車両の急激な進路変更は、重大な横転事故につながる原因となっています。 

 

トラックの荷崩れによる重大事故の事例 

 

 トラックの荷崩れは、死傷事故や大規模な道路閉鎖につながる重大事故を引き起こしてきました。ここでは、国内外で発生した事例を3つ紹介。荷崩れがもたらす深刻な影響を解説します。 

 

インド:マンゴー運搬トラックの横転死亡事故 

2025年7月、インド南部にあるアンドラ・プラデシュ州で、マンゴー約40tを積んだトラックが横転する事故が起きています。この事故では、少なくとも9人が死亡し、11人が負傷しました。 

警察は過積載が原因とみていますが、荷台には20人もの作業員が座っており、横転時にマンゴーの木箱が落下して多くの死傷者が発生しました。インドでは過積載、道路状態の悪さ、無謀運転などにより、致命的な交通事故が頻発しています。 

 

日本:18t超過の過積載による死亡事故  

2018年9月、千葉市若葉区の県道交差点で大型トレーラーが横転し、対向車線の軽乗用車を下敷きにして家族3人が死亡する事故が起きました。トレーラーは最大積載量を約18t超過し、鉄くずなど約47tを運搬していました。 

過積載により車両の制御が困難となり、坂道を下って交差点を左折する際に曲がりきれず、横転したとみられています。運転手の勤務先は過積載を容認したほか、無許可で運送業を行った貨物自動車運送事業法違反の容疑でも書類送検されました。 

 

オーストラリア:大量の金属片飛散による大規模事故 

2025年2月、オーストラリアのシドニーでは、金属スクラップを積載したトラックの荷崩れにより、高速道路へ鋭利な金属片750kgが散乱し、300台以上もの車両に影響を及ぼす大規模事故がありました。 

高速走行中に荷物が荷台から飛散したため、後続車両が回避不能となり、多重衝突を引き起こしたのです。適切な固定と点検が欠けると、広範囲に被害を及ぼすという事例です。 

 

トラックの荷崩れを防ぐための対策

荷崩れの防止には、正しく積み付けと固定を行い、運転操作によって崩れを誘発しないようにするなど、包括的な対策が必要です。ここでは、荷崩れの各種対策について、詳しく見ていきましょう。 

 

荷物積み付けの工夫 

荷崩れ防止の基本は、正しい積み付けにあります。まず、重心管理を徹底し、重い荷物は荷台の下部や中央部に配置し、軽い荷物は上部に積むことで低重心を維持します。さらに、荷物を荷台全体に均等に分散し、局所的な高荷重を避けることが重要です。積み方としては「レンガ積み」や「井桁積み」を用い、荷物同士が相互に支え合う構造を作ってください。 

レンガ積みは、レンガを積むときのように上下の段をずらしながら配置し、荷物同士をしっかり噛み合わせることで安定性を高める積み方です。一方の井桁積みは、木材を交差させて積むように、荷物を縦横交互に組む方法で、荷物同士が相互に支え合う構造にできます。 

 こうした積み方を採用することで、荷崩れの連鎖を防ぐことができるでしょう。また、荷物間に隙間が生じる場合は、緩衝材や止め木を使って充填し、走行中の移動余地をゼロに近づけることで振動による荷崩れを防止できます。 

 

固定具の活用 

適切な固定具を選択し、正しく活用することも、荷崩れを防止するために重要です。ラッシングベルトは荷物の大きさや重量に応じて幅を使い分け、確実な固定を実現します。荷物の角には必ず角当てを使い、ベルトの損傷を防ぎましょう。鋼材や建機などには、より強度の高いワイヤーロープとターンバックルを用います。 

さらに、専用レールやストッパーを荷台に設置すれば、荷物の横移動を防ぎ、固定の信頼性を高めることができます。走行中の振動によるゆるみは発生するものと認識し、出発前、そして長距離の場合は休憩の都度、張りの状態を必ず点検・調整(増し締め)してください。 

 

急操作回避による慣性力制御 

運転操作によるトラックの荷崩れを抑えるには、急発進や急ブレーキを避けることが不可欠です。積載時は空車時より長めの加減速時間を確保し、荷物にかかる慣性力を最小化します。エンジンブレーキとフットブレーキを併用し、段階的に減速する技術も有効でしょう。 

高速道路では、行先の交通状況を把握することも重要で、例えば時速90kmで走行している場合、500m程度先の状況まで予測する必要があります。また、早めの進路変更を心掛け、車線変更時は最低3秒以上かけてゆっくりと行えば、横方向の慣性力による荷崩れを防ぐことが可能です。 

さらに、定積載を超えたときの制動距離は空車時の2倍の長さを想定し、十分な車間距離を保つようにしてください。 

 

道路・気象条件の変化に適応した運転  

道路や気象条件に応じた運転も、トラックの荷崩れ防止に欠かせません。カーブでは進入前に十分減速し、カーブ中は一定速度を維持することで、遠心力による荷物の横移動を防ぎます。雨天時は通常の直進道路走行の70%の速度で走行し、路面摩擦係数の低下を考慮した慎重な運転が必要です。 

強風時は横風に対する車両の安定性確保のため、さらに速度を抑制します。悪路や工事区間では徐行運転を徹底し、段差を通過する際には一時停止をして衝撃を最小化することで、振動による荷崩れリスクを回避できるでしょう。 

 

トラックの荷崩れを防止し、安全輸送を実現しよう  

トラックの荷崩れを防ぐには、過積載を避け、重心管理を徹底し、確実な固定作業を行うことが基本です。また、急発進、急ブレーキ、急ハンドルを避け、道路状況や気象条件に応じた丁寧な運転も、荷崩れ防止につながります。これらの対策を総合的に行うことで、安全かつ効率的な輸送業務を実現できるでしょう。