1957年、日本で初めて積載量10トンを超え、かつ最高時速90km高速走行を可能とした新型トラックの試験車5 台が完成。1958年2 月に、10.5トン積み大型トラック「6TW型」として発売された。 新型トラック6TW型は、プロペラシャフトが2本あるのが大きな特色だった。強力なUD6エンジンのトルクを2本のプロペラシャフトに分けることで、動力伝達機構の負担を軽くし耐久性を高め、タイヤ寿命を延ばすことができた。
その頃、 日本最大の水力発電所となる黒部ダムの建設工事に、外国製の大型トラックの導入が計画されているという情報が入ってきた。ダム建設では、大量の建設資材を運ばなければならない。
黒部ダムの建設は、3,000m級の山々が連なる黒部川源流で行うかつてない難工事である。資材を運ぶトラックが故障すればそれだけ工期が遅れる。当時、日本製のトラックではとても無理だと考えられていた。 そこで引き下がることはできない。私たちは、外国製のトラックに対抗しうるトラック試験を行う機会を得た。 テスト結果は、建設業界にとっても驚きだった。彼らは、「日本でも、外国製大型トラックと同等の性能、信頼性をもつ大型トラックが製造できるようになったのか」と語り、建設工事用として6TW型が正式採用されることになった。 6TW型は、長尺の鉄骨やセメントなどの重量物をダム建設現場に届けた。その間、ほとんど故障することはなかった。こうして、日本屈指のビッグインフラプロジェクトの完成に貢献したのである。
黒部川源流のダム建設現場で、6TW型の性能・信頼性が高く評価されて正式採用されたというニュースは、すぐに輸送業界にも広がり、6TW型の注文が全国から集まってきた。 日本では、1964年開催予定の東京オリンピックを目指して、名神高速道路や新幹線、高層ホテルの建設などが進められていた。6TW型は、そうしたさまざまな現場に建設資材を運び、新幹線車両を運ぶなど、大いに活躍した。
東京オリンピック開催当時、日本は「アジアの奇跡」と呼ばれる高度経済成長時代を迎えていた。日本全国で高速道路建設が進んだことで、この時期から輸送の主役が鉄道輸送からトラック輸送に急速に移っていった。 その先頭に立って活躍したのが、6TW型である。6TW型は、12トン積みの6TW12、6TW12・ダンプ仕様、トラクター仕様などのシリーズが開発され、高速・大量輸送ニーズに応えていった。