豪雪地帯の社会機能を止めない  ~除雪を通じて持続可能な地域社会を~

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積雪寒冷地域では冬場の暮らしや物流などの社会機能を維持するうえで除雪は重要です。国内でも有数の降雪量が多い空港で、円滑な輸送に尽力する空港除雪隊と航空会社、そして除雪車両の稼働を支えるUDトラックスの整備士を通して、地域のインフラと「誰ひとり取り残さない」持続可能な地域社会を実現するうえで、自助、公助、共助など様々な取り組みをしながら、課題を解決していく姿を取材しました。

こちらから動画をご覧になれます

本格的な降雪期を迎える12月、青森空港では毎年、同空港除雪隊「ホワイトインパルス」の出動式が行われ、多くの観光客や報道陣が詰め寄せます。「ホワイトインパルス」が注目を集めるのは、多い年では累計降雪量が10mを超えるという、国内でも有数の厳しい条件のもとにある青森空港において、「除雪による欠航ゼロ」を実現し、冬場の地域経済―ヒト・モノ・カネーの流れを支え続けているからです。

青森空港は滑走路延長3,000メートル、幅60メートル、国内線・国際線合わせて1日平均約40便の航空機が離発着しています。除雪面積は約55万平方メートルで、東京ドーム約12個分です。「ホワイトインパルス」は、隊列を組んで重機で除雪する姿を航空自衛隊の「ブルーインパルス」になぞらえ、平成25年に命名されました。

「ホワイトインパルス」は積雪3センチ以上で出動し、37台の重機を使って滑走路などの除雪作業を約40分で完了します。出動実績は、平成17年度~令和元年度の15年間で年平均242回でしたが、温暖化の影響もあり今シーズンは1月末で143回と減少傾向にあります。

「やっていてよかった」と実感

 青森空港の冬場の安全運航を支える除雪作業について同隊の福士真人隊長は、「(早朝、極寒、体力を要する環境のため)つらい時はたくさんあったが辞めようと思ったことは一度もない」と断言します。

なぜなら、「飛行機が豪雪の中でも無事に飛んでいく姿を見ると、やっていてよかった」と誇りを感じるからだそうです。

 「ホワイトインパルス」は共同企業体「除雪企業体」が担っており、県内の建設会社である鹿内組、西田組、木村建設、青洋建設で働く従業員で構成されています。隊員は現在、全体で約120名おり、常時6~70名がいつでも出動できるよう待機をしています。昭和60年代の創設時、農閑期において県内で仕事を提供すること目的として設立されたこともあり、現在でも冬場に仕事が減る農業従事者や建築関係者が多く在籍しています。

「押す」を支え、共有価値を創造

「ホワイトインパルス」と共に、青森県の空の物流機能を支えているのが、空港関係者や航空会社、そしてUDトラックスです。

UDトラックスは、国内唯一の総輪駆動除雪車メーカーとして、除雪車両の納入やプロフェッショナルによる除雪車の整備を通じ、「ホワイトインパルス」の活動を支えています。

 また、青森空港管理事務所は、除雪車の後ろを走るなどして、雪が取り除かれた後の滑走路などの摩擦係数を測り、既定の係数に達したことを確認して、航空管制官や各航空会社にに情報を伝えています。

さらに、青森空港の主要運行航空会社である日本航空は、滑走路での除雪作業の状況を見極めつつ、航空機に積もる雪の防除雪氷作業を実施するなどをして離陸に備え、高い就航率を支えます。

「除雪車の整備では、オイルや水漏れなど通常故障への対処だけでなく、寒さ対策とプラウの作動のチェックがオフシーズンに行われる点検で最も重要です。外気温と車内の温度差によって除雪車のフロントガラスが曇り、操作に支障が出る場合があります。このため定期点検では、ヒーターなどの効き具合を入念にチェックします。除雪車は寒さが厳しくなればなるほど、稼働が増える車両。寒さの中での『雪を押す』を支えている」とUDトラックス青森カスタマーセンターのセンター長である高橋さんは説明しています。

 UDトラックスでは、「ホワイトインパルスから故障の一報が入ると、大雪や夜間に関わらず出動します。例えば、部品が青森の拠点にない場合は、弘前や八戸など近隣拠点から入手し、限られた時間内で修理をして、除雪隊の次の出動に備えている」(高橋さん)

高橋さんは、「人生、どんな時も全力でやってきた。目の前のトラックを直す。どこでも、どんな時でも直す。そうすればお客様はUDに戻ってきてくれる」と述べ、お客様のニーズに寄り添い、「除雪車の稼働をサポートすることで、持続可能な地域社会の実現という共有価値を創造したい」と語りました。

顕在化する将来課題とステークホルダーに求められる役割

 チームで意見を出し合い、継続的に作業効率を高めている「ホワイトインパルス」ですが、過疎・高齢化、地域人材や熟練作業員不足といった地域課題が顕在化しているだけでなく、デジタルトランスフォーメーションも大きな課題となっています。

 除雪作業にあたり、500灯ある航空灯火周辺は現在、破損防止のため、すべて手作業で行われています。除雪車の自動化やICTの導入により、コネクティビティ技術を活用し、人と自動走行車とのリアルタイムでのシームレスな協働が実現すれば、大幅な効率化を図れるとみられています。

また、異常気象による大雪などによる交通障害のリスクも大きくなっているため、気候データなどとの連携やデータの有効活用が今後の課題となっています。

さらに、福士隊長は、「ホワイトインパルス」ではこれまで車両操作を担当する女性隊員の採用実績はないものの、「ギアチェンジやハンドル操作など、さらに運転しやすい車両があれば、女性にも働いてもらえると思う」と述べ、除雪作業での女性採用にも意欲を示しました。

UDトラックスでは「人を想う」をデザインコンセプトとして、オートマチックトランスミッションのESCOTを搭載し、非熟練ドライバーや女性が運転しやすい機能を追求するなど、社会ニーズの多様性に対しメーカーとしての社会的責任を担っています。

また、自動運転技術やコネクティビティなどの先端技術の研究開発を通じ、物流の将来課題を解決し、スマートロジスティクスの実現に貢献しています。

日本の冬期は世界的に見ても航空機にとって厳しい気象環境であり、滑走路の除雪作業、機体防除雪氷液の散布作業などは、冬期運航の安全性維持・運航効率向上に必要不可欠なものです。

 日本航空(JAL)で貨物を取り扱う斉藤万柚子(まゆこ)さんは、「貨物にはお客様の思いが込められています。貨物を止めないこと、貨物に寄り添い、お客様から預かった荷物を濡損(じゅそん)させないで、そのままの状態で返すこと」が最優先課題だと、お客様への想いを語ります。

このためJALは、除雪作業に取り組む「ホワイトインパルス」などの活動に協力するだけでなく、「社内で『おせっかい運動』を実施していています。気づいたことはなんでもお互い言い合う環境を作って、事故を未然に防止すると同時に、小さな気遣いでお客様の荷物の輸送に関する対応の質を改善しています」(斉藤さん)

三方よし、四方よし、八方よしを目指して

 今回の事例では、冬場の除雪に関わる各ステークホルダーが各々解決に貢献することで、地域の社会・経済機能が維持されていることを紹介しました。

実際、青森県などによる観光振興策が奏効し、「ホワイトインパルス」の活動が注目を浴びるとともに、観光資源としての関心も高まっています。

一方で、福士隊長が「除雪作業はもともと、県外に出稼ぎに行っていた農家の人に、地元で仕事をみつけて、地元貢献してもらうことが目的で募集を始めました。現在は農業に従事する人の数も減ってきているため、人材確保が課題となっています」と言うように、構造的な担い手不足の問題は未解決なままです。

地域課題を解決し、地域社会の持続可能性をさらに高めるには、今後「自助」「共助」「公助」を組み合わせた取り組みを促進し、多様で柔軟な連携・協働を加速する必要性があります。

UDトラックスも物流を支えるバリューチェーンの一員として、「ホワイトインパルス」が「次の世代があこがれる職業、そして魅力ある職業」(福士隊長)となるための一助となり、冬期運航の安全性維持・運航効率向上に貢献することで、持続可能な地域社会の実現と地域の活性化という「Better Life」な価値を創造していきたいと考えています。


当リリースに関するお問い合わせ先

UDトラックス広報
Info.udtrucks.japan@udtrucks.co.jp


【UDトラックスについて】
UDトラックスは世界60カ国以上で先進的な輸送ソリューションを提供する日本の商用車メーカーです。1935年の創業以来、「時世が求めるトラックとサービスを提供する」というビジョンを掲げ、革新的な技術の開発で業界をけん引してきました。より高い満足を求めるお客様のため、私たちは信頼性の高いソリューションにより、スマートロジスティクスの実現に向けて取り組んでいます。大型トラック「クオン(Quon)」「クエスター(Quester)」から中型トラック「コンドル(Condor)」「クローナー(Croner)」、小型トラック「カゼット(Kazet)」「クーザー(Kuzer)」までのフルラインアップ、そしてカスタマーサービスと販売金融により、世界各国の様々なお客様のニーズに対応しています。