1990年 – 新時代を拓いた ビッグサム
人にやさしく、街にあたたかく

モータリゼーションの進展とともに、1980 年代初頭に大気汚染や地球温暖化などの地球環境問題が本格的にクローズアップされてきた。1970年代以降、欧米各国で本格的に自動車の排出ガス規制が導入され、日本でも世界で最も厳しい排出ガス規制が施行され、年々、規制値は厳しくなっていった。 当社は、低公害エンジンを先行開発して厳しい規制をクリアすると同時に、トラックの燃費性能や動力性能を高めてきた。

 

さらに、「人にやさしく、街にあたたかく」をコンセプトに、快適性・安全性の向上と、街の景観に溶け込む先進的なデザインを追求して開発されたのが、1990年発売の大型トラック「ビッグサム」である。 ビッグサムの新キャビンは、3次元曲面によるフラッシュサーフェス化により空力特性が大幅に向上した。エンジンには、新開発の低公害・低燃費のNF6型を搭載し、ターボエンジンにはノズル開度を無段階に調整できるVNT(バリアブル・ノズル・ターボ)を採用している。 最新の電子技術による快適性・安全性の向上も、ビッグサムシリーズが業界をリードした。

 

ビッグサムには、当社が1989年に世界で初めて製品化したレーザーレーダー追突防止装置がオプション設定され、1991年には電子制御式自動変速機(E-MATIC)が装備された。1992年にはABS(アンチロックブレーキシステム)、ASR(アンチスリップレギュレーション)をオプション設定(その後、標準装備)し、さらなる操作性向上と安全性向上が図られている。

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1995年には、走行時のクラッチ操作が自動化された国内初の機械式電子制御トランスミッションESCOT-Ⅱ塔載車も登場した。当社のエンジニアはギアの切り替え時にクラッチ操作が必要とされるESCOT-Ⅰも開発していたが、一連の過酷な試験に合格した自動化されたクラッチを有するESCOT-Ⅱの完成度が高く、信頼性があると判断されたため、ESCOT-Ⅱが販売されることとなった。

ESCOT-Ⅱは、発売当時からさらに先を見据えたトランスミッションであった。このトランスミッションは、正確にはオートマチックではなく、ドライバーが手動でギアを変更する必要があった。しかし、クラッチを踏む煩わしさがなく、シフトレバーを上げ下げするだけで容易にシフトチェンジができた。これによって日常での利便性が目に見えて高まった。渋滞した道路であろうが、曲がりくねった山岳道路であろうが、あらゆる道路事情でのギアの制御を意のままに行うことができ、トラックのイージードライブ化に大きく寄与した。 エンジンでも、GE13を1998年に開発し、ビッグサムに塔載している。GE13エンジンには、業界初の電子制御ユニットインジェクターを採用し、最大440PSの高出力を実現している。 進化を続けたビッグサムシリーズは、21世紀への新時代を拓いたトラックであった。